投稿者: ODEN

  • ODEN代表・松崎が立教大学で講義

    「誰のためのエネルギー?」原発・メガソーラーの共通点と、地域を温める「おでん」の挑戦

    去る2025年11月20日、立教大学でODEN代表・松崎がゲスト講師として講義を行いました。

    講義名は、『持続可能性の理論と実践』。全学部の学生が履修できる講義で、 1年生から4年生まで60名前後の学生が履修しています。
    この講義は、ODENメンバーであり立教大学コミュニティ福祉学部の教員でもある空閑(くが)が小川町在住の佐藤太さんと共同で企画した科目です。

    松崎はこの講義で、持続可能性実現のための実践のひとつとして、小川町でのODENの取り組みを紹介しました。

    「エネルギー問題」と聞くと、遠い国の話や難しい技術論に聞こえるかもしれません。
    しかし、今回の講義と学生たちのリアクションから見えてきたのは、
    これが「私たちの暮らしと意思決定」の結果そのものであるという事実でした。

    講義のハイライトと、鋭い質疑応答、そして学生たちの生の声をレポートします。

    1. 原発とメガソーラー:繰り返される「置き去り」の構造

    「平和利用」というプロパガンダと原発

    講義の前半で、松崎は日本のエネルギー政策の歴史を語りました。

    かつてヒロシマ・ナガサキの経験から「破壊」のイメージが強かった原子力。
    しかし、1950年代以降、「平和利用」という名目で原子力発電所の導入が進められました。
    高度経済成長を支えるため、あるいは過疎地域の振興策として、
    国策主導で建設が進みましたが、2011年の東日本大震災と事故により、
    「帰れない故郷」を生む悲劇をもたらしました。

    「クリーン」なはずの再エネが抱える矛盾

    震災後、「原発に代わる希望」として急拡大したのが太陽光発電(メガソーラー)でした。
    しかし、FIT(固定価格買取制度)による投資ブームは、新たな問題を引き起こしました。
    ODENが活動する埼玉県小川町の事例では、東京ドーム18個分もの山林を伐採するメガソーラー計画が浮上。
    「地元で使わない電気のために、なぜ地元の自然を壊すのか?」
    という疑問から、住民による反対運動が勃発しました。

    学生が見抜いた「共通点」

    グループディスカッションで、学生たちはこの2つの事例(原発とメガソーラー)に共通する問題点を鋭く指摘しました。

    地域不在の決定:

    「国や大企業の方針が先で、地域が後回しにされている」
    「地域の声がしっかり反映されていない」

    利益の流出:

    「リスクは地域が負うのに、利益(電気やお金)は都市部や外部企業に流れていく」

    目的の喪失:

    「誰のためのエネルギーかが見失われている」。

    多くの学生が、「クリーンと言われる再エネでも、進め方を間違えれば環境破壊や住民トラブルになる」という事実に衝撃を受けていました。

    2. 解決策は「おでん」? 地域を温めるエネルギー

    こうした「大規模・中央集権・外部依存」のエネルギー構造へのカウンターとして紹介されたのが、
    「小川地域電力プロジェクトおでん」です。

    「おでん」のレシピ(仕組み)

    ユニークな名前の由来は「がわまち(小川町)」「でんき(電気)」などを掛け合わせたものですが、その中身は真剣です。

    エネルギーの地産地消:

    地域で作った電気を地域で使う。

    経済の地域循環:

    地域外へ流出している年間32億円の電気代※を、地域内に留めることで経済を回す。
    (※地域エネルギー需給データベース、2020年
    https://energy-sustainability.jp/?code=113433

    顔の見える関係:

    「安ければいい」ではなく、環境やコミュニティに配慮した「顔の見える電気」を選ぶ。

    学生からは「ODENのネーミングセンスが刺さった」「親しみやすい」といった声や、
    「電気も地産地消することで、地域経済が循環するという発想が新鮮だった」という感想が多く寄せられました。

    3. 【深掘りQ&A】貧困と交付金、そして「めんどくさい人」になる勇気

    講義の中で特に議論が深まったのが、ある学生からの率直な質問でした。

    学生の質問:

    「貧しい自治体にとって、原発などの交付金は魅力的。
    リスクはあるかもしれないが、お金のために受け入れるのは仕方ない側面もあるのではないか?」

    この問いに対する講師陣の応答は、エネルギー問題の核心を突くものでした。

    • 「お金で償えない喪失」:

    交付金は一時的だが、事故が起きれば故郷には二度と帰れない。
    その苦しみはお金では補填できない。

    • 「格差を利用した構造」:

    もともと産業が乏しい地域や、歴史的に困難な背景を持つ地域が、
    その「弱さ」ゆえに危険な施設を押し付けられている構造があるのではないか。

    • 「めんどくさい人」の重要性:

    講義の担当教官でもある空閑は、
    「物分かりのいい人にならず、『なんか変だ』と思った時に声を上げる、
    『めんどくさい人』になることが、社会の暴走を止めるブレーキになる」
    と、語りました。

    このメッセージは多くの学生に響き、感想シートには
    「これからはあえて『めんどくさい人』になって意見を言おうと思う」
    という決意の言葉が並びました。

    4. 「話し合い」という高い壁を越えるために

    解決策として多くの学生が「住民との話し合い」を挙げましたが、
    松崎からは「話し合いをしましょうと言っても、人は集まらない」という厳しい現実も共有しました。

    これに対し、ある学生は感想で次のように自己分析しています。

    「日本には話し合いの文化がないという言葉にハッとした。
    自分も授業で意見を求められても、周りを気にして手を挙げられない。
    まずは身近な人との会話から始めたい」

    エネルギー問題の解決は、巨大な発電所を作ることではなく、
    実は「隣の人と本音で話す」「小さな違和感を言葉にする」という、
    私たちの日常のコミュニケーションを変えることから始まるのかもしれません。

    まとめ:小さくても確かな自立へ

    講義の最後、松崎は学生たちにこうエールを送りました。
    「やりたいことは全部やったらいい。時間がないのは言い訳で、1日10分でもやればいい」

    巨大なシステムに依存するのではなく、「小さくても確かな地域の自立」を目指すODENの取り組み。
    それは、私たち一人ひとりが自分の人生の主導権を取り戻すことと同義なのかもしれません。